column 5 住宅設計の基本的な考え方 12

材料・素材

ギャラリー澤 姶良市平松

ギャラリー澤

土壁の外壁が優しく光を受け入れる

基本的に床は合板を使わずに無垢板で、壁は塗り壁もしくは塗装壁とします。壁紙、ビニールクロス、合板の類は使いません。それを貼るための糊やボンドを使いたくないのと、住宅の材料として長年付き合っていく上で、充分に愛情にこたえてくれる素材とは思えないからです。
床のフローリングは無垢材を使います。無垢板は湿度の高い時(梅雨時など)は湿気を吸収してくれ、乾燥時期(冬場など)はその水分を放出してくれ、家の中の湿度を一定に保ってくれます。杉の柱1本で1升瓶1本分の水分を吸収するといわれます。
壁の塗り壁も同じような役目があります。梅雨時でも床がべたべたせずに快適に過ごせるのはこのためです。


年間に10日間程度しか雨が降らない北米やカナダで生まれた高気密住宅は、日本の中でも特に高温多湿の鹿児島にあっては風土的にまったく不向きだと考えます。それよりも先人の知恵に学んで夏場は風通しを考え、冬場は効率の良い断熱材の使用で鹿児島の風土に合った快適な住宅を作るべきです。

極力国内産の材料を使いたい。それもなるべく近くで取れたものを。食物も近くで採れたものの方が体に好いと言います。極端なことを言えば、家を建てる土地の土や石を使えば古くなっても周囲の土の色と同じで、くずれてしまってもまた土に戻るわけで地球環境的にも何ら無理がありません。風景としてもきれいです。昔の家並みが風景にとけ込んでいるのもそういった造り方をしていたからです。

パリの街もメトロを造ったときに地下から出た大理石をパリ中の建物に使ったものです。エーゲ海に浮かぶミコノス島も島の土である石灰岩で家を作っただけの話で、あの真っ青な海に浮かぶ真っ白な建物は何も観光のために意識的に造られたもではなく、ただ単にそこにあった土で作っただけのことです。結局それが一番風景や風土に合うということではないでしょうか。